el_payasoのブログ

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きのこ帝国「タイム・ラプス」。彼女達なりのOMOIDE IN MY HEADがそこにいた。

 

kinokoteikoku.com

 

1か月前くらいに「きのこ帝国は本当に変わってしまったのか」みたいな記事を書いたんですよ。で、書いているうちに9月ニューアルバム発売!みたいなのを知ってワクワクしていまして。早速今日聴いたのです。ということで、感想を書かせていただくのです...!!

 

きのこ帝国は、ロック・バンドだ。

と僕は今回考え直すことができた。定義だなんだというのは面倒くさいが、僕の好きなロック・バンドのどれもが抱えている空気が、今回の「タイム・ラプス」にはあふれていたのだ。だから、きのこ帝国は、ロック・バンドだ。

この「空気」が何なのかは、いまだにうまく説明できない。でも、ある。

「時間の経過・推移」を意味するタイトルがつけられたこのアルバムの中には、紛れもなく時間が流れていた。今を生きる人が、今の空気をそこに詰め込んでいた。発売してすぐ聞いたからなのかもしれないけれど、僕はそう感じた。

 

1曲目「WHY」と2曲目「&」は、きのこ帝国というバンドそのものの「時間の流れ」をガツーンと味あわせてくれた。「ロンググッドバイ」の頃に引き返すつもりは微塵も感じられないような曲調、歌詞。どの方向を向いているのかはともかく、とにかく自分たちは先に進むのだと、言われているようにすら感じる。特に、「&」の冒頭、

くだらない夜で埋めた 

という言葉。どっちかと言えば、このバンドは「夜が友達」みたいなところがあると思っていたから、「くだらない夜」という言葉の登場はなかなかに「変化」を感じる。ただし、別に強調するようなものではない。というところに「猫とアレルギー」辺りの変化とはまた違うものがあるように思える。こっそり。

 

3曲目「ラプス」からが深い。

なぜ疑うことだけ上手になるの 誰かを信じたい それだけなのに 

たぶんこんなことは昔は唄わなかったと思う。そこにある「ラプス」。この曲にこういう歌詞を乗っけたことに、このアルバムの方向性に対する強い意志というか、覚悟を感じる。

 

4曲目「Thanatos」は、このアルバムの形を決定づけてくれる。曲調は懐かしさも感じる、好みのバンドサウンドなんだけど、それに乗っかる歌詞がまた沁みる。

明日へ繋がるドアを蹴飛ばしてみたいけど

泣いてる誰かが言う

「それでも、進め」 

 「それでも進め」という言葉に、僕はものすごい悲壮なものを感じる。後戻りはできない。先にも進みたくない。でも、立ち止まることもできない。ここが肝で、「できない」のである。なんせ、相手は時間。どうにもならないやつがそこで僕らを見ている。だから、できることと言えば、よりよい先を信じて、進むことぐらい。

これが、アルバム全体を貫くテーマなんじゃないだろうかと思う。すなわち、「どうにもならなさ」を徐々に憶えてきている中で、自分はこれからどうしていこう、という苦しみ。決してそれは、冒険に出るような興奮ではなく、苦しみ。だから、タイム・「ラプス」なのだろう。経過する時。経過してしまう、時。

 

この大枠に乗って、そこから先は流れてゆく。

「傘」は、まだ見えない解決のキーワードに、先回りして疑いの目を向けるような曲。向かおうとしてるけど、それでいいのか?という自分がいる。たぶん、過去の自分。

「ヒーローにはなれないけど」 金木犀の夜」 「中央線」 「LIKE OUR LIFE」この辺りが、過去の自分を振り払おうとする。これらの曲のいずれにも、苦しみに対する答えとして、一つのキーワードがフワフワと浮遊している。それはすなわち、「君」だ。心なしか、12曲目「カノン」につなげるためのブリッジであるように感じられる。

 

そして、「中央線」でもう一つのキーワードが唄われる。

いつか、こんな想いも いつか、消えていくんだろう 

最初のサイトに載ってるインタビューで、この曲が大学3年のころに作られたものであることを佐藤さんが話している。21歳が吐くこの手の言葉って軽いよなあって思うだけど、この軽さがかえっていい味を出しているし、次につながっている。1周回ってくるための、ランドマークみたいになってる。

 

炸裂するのがこの次、「タイトロープ」。この曲が本当に沁みる曲だった。やばい。やるせなさすぎる。なんていうか、聴いたら分かるよ。ていうか、聴いて分かんなかったら、だめ!

コード感からなんとなくサカナクションのアルバムの終盤戦を感じるのだけど(たぶんそれもどっかに元ネタがある)、まあそんなことはどうでもいいのだ。沁みる。

タイトロープ

朝焼けに消えてしまう前に

飼いならしたつもりでいた夢は

そっと消えていた

あー、痛い。痛すぎる。刺さる。この無力感、昔を振り返ってしまったときのこの感覚が、強い。苦しい。

 

そしてその次の「カノン」である。もし、いまのきのこ帝国に「伝えたいこと」があるとするのなら、それはたぶんこの曲で唄っていることなんじゃないかな、と思う。とにかく、「君」なんだ。こんだけ書いといて何なんだけど、この曲はぜひ聴いてほしい。びっくりするくらいストレートに、「タイム・ラプス」の苦しみへの対抗策が唄われる。

 

最後、「夢みる頃を過ぎても」。

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ここまでのすべてが、この曲によってきれいにまとめ上げられている。結局のところ、もがいてみたけれど、ここまで書いた苦しみも、対抗策も、飲み込めない。あなたのことを考えるたびに、それが一時のものに過ぎないのだということに、気付かされる。そんな中で、夜は明ける。それ自体が、「タイム・ラプス」。

たぶん、最後は「中央線」で唄われた言葉に戻ってくるのだろう。

いつか、こんな想いも いつか、消えていくんだろう

 

 

ところで、僕は最後の曲を聴いて、歌詞を読んで、「OMOIDE IN MY HEAD」を感じた。

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ぜんぜん違うけどね。でも、きのこ帝国なりの、「OMOIDE IN MY HEAD」がそこにあるんじゃないかなと、思う。

なんて言ったらいいんだろう?ぱっと浮かんだのは「時間との戦い」という言葉なんだけど。まあ、この2つの曲をどんな言葉でくくれるのかは、また探していこうと思う。

 

いいアルバムでした。きのこ帝国に惚れ直した、そんな感覚です。